蔵の中では、大地に恥じない仕事をするために蔵人たちの真剣勝負が続いています。
芋の収穫期に入ると、契約農家から届いた芋を
選別する作業を行います。
蔵人による「芋削り」の工程です。全員が包丁を握り、
傷んだ部分や焼酎造りに不要な部分を削り取っていきます。
原料である芋に私たち蔵人が直接手で触れることで、
芋が内側に抱えている痛みなどを感じ取ることもできます。
まず、蔵人たちが手間と時間をかけて、丁寧に蒸した米に麹菌を混ぜます。
小さな命にふれるデリケートな工程です。翌日、麹室と呼ばれる、
保温や換気を配慮した部屋に移し、一定の温度になるように管理しながら、
一日寝かせて麹ができあがります。これを、製麹と言います。
昔から、一「 麹」、 二「 もと(酒母)」、 三「 造り」 と
言われるように、焼酎造りにおいて製麹が最も大切な作業なのです。
芋焼酎製造の次なる工程「もろみ造り」は、通称「仕込み」とも呼ばれ、2回にわけて行われます。
まずは麹、仕込み水、そして酵母を加えて一次仕込みを始めます。 麹菌の酵素によって分解された糖分を栄養分に、
酵母菌が増殖し、糖をアルコールに変えていく。この発酵が進んだものを「一次もろみ」と呼びます。
そして、これに主原料の芋を加えるのが、二次仕込み。
原料芋のでんぷんの糖化と、アルコール発酵が同時に効率よく進行する並行複発酵によって、 高濃度のもろみができ、
多くの香味成分が生まれます。また、酵母の発酵によってアルコールと炭酸ガスを出すと、もろみの中から「ポコポコ」と対流し始めます。
2回目の仕込みが終わると、もろみからアルコールや揮発成分を
とり出すため蒸留を行います。蒸留とは、もろみを加熱して蒸気にし、
その蒸気を冷やして再び液体に戻す工程のこと。
大気圧の下で加熱する方法を常圧方式、
真空(減圧下)の中で加熱する方法を
減圧方式と言います。こうして集められた透明な液体が、
芋焼酎の原酒になるのです。
しかも、単式蒸留だから、1回の蒸留で香味成分をほとんど
失うことなく高濃度のアルコールを抽出することが可能となります。
このようにして造られた、アルコール度数35~45度の原酒を数ヶ月熟成させます。
生まれたばかりの焼酎を、やわらかく落ち着かせるこの工程は、人の手ではなく、
時のチカラを借りなければできません。
静かな眠りから目覚めた焼酎は、貯蔵期間、貯蔵方法によって個性が異なります。
貯蔵した原酒は、濾過・アルコール調整を行った後、
瓶詰めし製品となります。ラベル貼りの工程では、
機械による作業だけではなく、蔵人の手によって一枚一枚ラベルが
貼られる製品もあります。こうして、たくさんの時間と人の手によって
生み出された焼酎もいよいよ完成です。
次々とトラックに積み込まれた製品は、各地の卸問屋、
小売店を経由して皆様のもとへ届けられます。